食品ロス問題専門家の井田留美さんが書かれた『あるものでまかなう生活』を読み、ショックを受けました。
タイトルだけ見て深く考えずに、これからは「小さな暮らし」をしましょうという提案かなと軽い気持ちでいたからです。
食品ロスに関しても、個人として「ものを大量に買って、腐らせたりしてはいけない」というレベルでしか捉えていませんでした。
でも、井出さんが主張するのは、もっと社会的な重大な問題でした。
多分、私のように「知らない」人がほとんどだと思うので、紹介したいです。

「あるのに捨てる」理不尽さ
井出さんが食品ロス問題専門家としての活動を始めたのは、2011年の東日本大震災の時、「あるのに捨てる」理不尽さを痛感したからだそうです。
当時、井出さんは食品メーカーに勤めていて、ボランティアで被災地に何度も足を運ばれました。
ある避難所で「平等配布」の原則を守るために、「同じ食品だけれどメーカーが違うから」「避難所の人数に少し足りないから」という理由で配られずに放置され、ダメになった食物を多く目にしたそうです。
確かに残念ながらお役所仕事では起こりそうなことですね・・・。
井出さんは、この出来事を契機に、 14年5ヶ月勤めた食品メーカーを辞めて独立されました。
欠品ペナルティー
食品業界には多くの商業慣習が存在するそうです。
法律ではないのにそれに従わなければ取引が難しくなるというもので食品ロスの原因の1つになっているようです。
まず挙げられるのが「欠品ペナルティー」。
食品メーカーの製品が欠品 して(発注数分が揃わなくて)納品できないと、コンビニやスーパー、百貨店などの小売業に対し、メーカーは、欠品ペナルティーと称される罰金(欠品粗利補償金)を、店舗ごとに払わないといけないそうです。
罰金どころか、悪くすれば取引停止となるそうです。
小売店としては、売れる分だけ最大限に売った方が売り上げが大きくなるのに、欠品で商品棚を空けてしまうと、お客さんからのクレームにつながる恐れがあり、最悪、顧客を失う可能性があるから、欠品はペナルティーに値すると言う論理です。
私はいつもケーキ屋さんとか残ったケーキをどうするのかなあと気になっています。「 売り切れたら終わり」でも良いのではないかと思うのですが、難しいところです。
3分の1ルール

最初の3分の1が「納品(納入)期限」メーカーが小売店にここまでに納品しなければならない期限です。
次の3分の1が「販売期限」小売店がこの期限が来たら店から商品を撤去し、メーカーに返品もしくは廃棄する期限です。
弁当やおにぎりならまだしも、何年も賞味期限がある食品ですら、「賞味期限」が3分の1残っているにもかかわらず、その前に「販売期限」があるということです。
井出さんの地道な活動もあって「食品ロス削減のための商業慣習検討ワーキングチーム」が設置され、農林水産省と流通経済研究所、食品業界の製造卸小売が横断的に3分の1ルールを緩和し、食品ロス削減に向けて努力するようになっていきました。
そして飲料と菓子については、「納品期限を3分の1から2分の1に伸ばすことで87億円分のロスが削減できる」という結果に基づき、複数の小売企業がペットボトル飲料と菓子については納品期限を3分の1から2分の1に延長することになったのです。
さいごに
コンビニは「食品ロスより販売機会ロスの方が重要」という考え方をするようです。
適量を作って売ることを目指すと、欠品を起こし、せっかくの売り上げを失ってしまう(販売機会ロス)から、たくさん用意して余れば捨てたほうがいいという考え方です。
食べ物を毎日山のように捨てても 懐が痛まないし、むしろ捨ててもらったほうが儲かるという仕組みは「あるものでまかなう」以前にどう考えてもおかしな話ですよね。
コンビニのように、いつ行っても欲しい商品が揃っている状態は便利ですが、その陰で、そういうことが起こっていたのですね。
私たちは「便利」を求め過ぎているのではないかと思えてきました。
世界には食べられない子どもたちがたくさんいるのに、日本では食べられるものを大量に捨てている現実。
私には廃棄する食品のことをどうすることもできないけれど、自分がどんなお店のどんな商品を応援していくか、そして、そこから買ったものを最後まで大切に食べないといけないなと痛感させられた本でした。
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